Article 5/5 of FWC Wing Chun versus Krav Maga
5. シナリオ型の護身術は、本当にプレッシャーテストできるのか?
護身術のトレーニングには、どうしても難しい問題があります。危険な技であればあるほど、その最終的な効果を本気の抵抗の中で安全に試すことが難しくなるからです。では、私たちは何を基準に「これは使える」と判断すればいいのでしょうか。
これはクラヴマガだけの問題ではありません。Functional Wing Chunにも当てはまりますし、競技ルールの外にある状況への対応を教える、ほぼすべての護身術に共通する問題です。これまでの記事では、クラヴマガの軍事的な背景、民間向け護身術への変化、シナリオや技の数、そして攻撃性やフィジカルの役割について考えてきました。その流れの最後に、シナリオトレーニングそのものをどこまで実際にテストできるのか、という問いを考えてみたいと思います。
現実的な護身術のトレーニングとは、単にスピードを上げ、強く叩き、できるだけ激しくすればいいというものではありません。むしろ、何を現実に近づけるべきなのかを考える必要があります。
格闘技には大きな強みがある
例えばボクシングをテストしたければ、方法は比較的明確です。二人の選手が向かい合い、お互いに相手を打とうとしながら、自分は打たれないように動く。グローブやルールなどの安全上の制限はありますが、中心となる問題はそのまま残っています。
レスリングも同じです。一方が相手を倒し、コントロールしようとし、相手もそれを防ぎながら自分のテイクダウンを狙う。BJJでは、相手が本気で抵抗していても、関節技や絞めが決まればタップして止めることができます。MMAは、さらに多くの打撃や組技を一つの自由な環境の中で組み合わせています。
もちろん、どの競技にもルールがありますし、一般社会で起きる暴力を完全に再現しているわけではありません。それでも、非常に重要なものが残っています。
相手がこちらのやり方を、本当に失敗させることができる。
護身術では、ここがもっと難しくなります。
護身術には避けられない矛盾がある
護身術と格闘スポーツの違いとしてよく挙げられる技ほど、実際には安全にテストしにくいことがあります。目への攻撃が本当にどれだけ効果的なのかを確認するために、お互いの目を本気で攻撃することはできません。喉への強い攻撃もできませんし、本物のナイフを使って防御が本当に通用するかを試すこともできません。
防具やトレーニング用の武器は大きな助けになりますが、安全にするほど状況そのものも少しずつ変わります。ヘッドギアを着けていれば、実際なら絶対に受けたくない打撃を受けながら前に進めるかもしれません。ナイフがゴム製だと分かっていれば、本物の刃物に対してなら取らないようなリスクを取ることもあります。
つまり、
技の最終的な効果が危険であるほど、その効果そのものを直接プレッシャーテストすることは難しくなる。
この問題から完全に逃れることはできません。FWCも同じです。だから大切なのは、「完全に再現できないからテストできない」と諦めることではなく、どの部分なら本当にテストできるのかを明確にすることだと思います。
見た目がリアルでも、判断までリアルとは限らない
シナリオトレーニングは、とてもリアルに見せることができます。普段着を着て、大声を出し、照明を暗くし、防具を着け、トレーニングナイフを持った相手が激しく突進してくる。見た目だけなら、道場でのスパーリングよりも現実の襲撃に近く感じるかもしれません。
しかし、そのとき防御する側は何を知っているでしょうか。今から攻撃されること、この人が攻撃者であること、もうすぐ始まること、ナイフが使われることを知っているかもしれません。場合によっては、どのような攻撃が来るのかまである程度分かっています。
つまり、一つのリアリティを上げる一方で、別のリアリティを下げている可能性があります。
一般市民の護身では、そもそも最初に、
「この人は本当に攻撃してくるのか?」
が分からないことも多いからです。
身体的なリアリティと判断のリアリティ
そこで、私はリアリティを少なくとも二つに分けて考えると分かりやすいと思います。
一つは身体的なリアリティです。相手がどれだけ速く動くのか、どれだけ強く抵抗するのか、壁があるのか、疲れているのか、普段着なのか。こうした条件はすべて重要です。
もう一つは判断のリアリティです。攻撃が来ることを知っているのか、いつ始まるか分かっているのか、どの攻撃が来るか分かっているのか、相手が途中で別の行動へ変えられるのか、こちらの最初の技を失敗させられるのか、そして攻撃が完成する前にこちらから動くことが許されているのか。
トレーニングは身体的には非常に激しくても、判断の不確実性がほとんどない場合があります。一般市民の護身には、身体能力だけでなく、不完全な情報の中で判断する能力も必要なので、この違いは重要です。
抵抗を増やすだけでは十分ではない
護身術の技をテストする方法として、まず協力的に技を覚え、その後で「今度は抵抗してください」とすることもよくあります。これはもちろん、まったく抵抗がない練習より一歩進んでいます。
しかし、ここにも落とし穴があります。防御する側は「この技を成功させる」ことが仕事になり、攻撃する側は「その技を止める」ことが仕事になります。すると、防御側はもっと強く技をかけ、相手ももっと強く抵抗し、最後には、もう状況に合っていない技をお互いに力で押し合うようになることがあります。
抵抗は増えました。
しかし、適応力が増えたとは限りません。
プレッシャーテストで問うべきなのは、
「もっと強い抵抗に対して、この技を力で通せるか?」
だけではありません。
それ以上に重要なのは、
「この技が通らなくなったとき、次にどうするのか?」
だと私は考えています。
失敗は情報になる
FWCで抵抗を加える大きな理由は、技が使えることを証明するためではありません。どこで使えなくなるのかを発見するためです。
最初は技がうまくいく。では、相手が少し変える。もっと抵抗する。角度を変える。体重を違う方向に使う。すると、どこかで技が止まるかもしれません。
それでいいのです。
そこで初めて、何が起きたのかを見ることができます。なぜ前進できなくなったのか。何が邪魔をしているのか。相手の抵抗によって別のルートができていないか。今の目的を捨てずに、方法だけを変えられないか。
つまり、抵抗は単に打ち破るものではありません。
抵抗は情報を与えてくれます。
経験が増えるほど、「もっと力を使う」よりも、その情報を利用できるようになってほしい。FWCでは、この流れを繰り返し練習します。
WORKS → BLOCKED / COUNTERED → ADAPT → WORKS AGAIN → CONTINUE
失敗はトレーニングの外にあるものではありません。
失敗そのものが、トレーニングの一部です。
危険な攻撃は、別の方法でテストする
では、目や喉など、安全に本気で攻撃できない場所を使う場合はどうするのか。
例えば目への攻撃をして、指が顔に触れた瞬間に「これは決まったことにしましょう」と練習を終えてしまえば、そこには大きな仮定が入ります。本当に当たったかもしれないし、外したかもしれない。少し触れただけかもしれないし、当たっても相手がそのまま動き続けたかもしれません。
本当にどうなるかは、安全な練習では確認できません。
そのため、FWCでは「とにかく急所を狙って、当たれば終わり」というタイプの技に大きく依存することは避けています。初心者向けのいくつかのシナリオで扱うことはありますが、それ以上に重視しているのは、その攻撃を安全に届けられる状態を作ることと、その後も有利な状況を維持できることです。
危険な瞬間の前後をプレッシャーテストする
危険な攻撃そのものを本気でテストできないなら、その前と後をテストすることができます。
抵抗する相手に対して、こちらは有利な位置を作れるのか。相手が自由に攻撃を続けることを妨げられるのか。バランスや構造を保ちながら、狙う場所へアクセスできるのか。ここまではかなりテストできます。
そして危険な攻撃だけを安全にシミュレーションします。
ただし、そこで練習を終わりにはしません。
相手はそのまま抵抗を続けることができます。こちらは、その攻撃が期待した効果を出さなかった可能性も含めて、もう一度有利な位置を保つ、あるいは取り戻す必要があります。相手が動いたらどうするのか、反撃したらどうするのか、次の機会を作れるのか。
つまり、
PRESSURE-TEST → SIMULATE → PRESSURE-TEST
という形です。
危険な攻撃の前に、そこまでのプロセスをテストする。危険な部分だけ安全にシミュレーションする。そして、その直後からまたテストする。
危険な瞬間の前後には、本当に失敗できる部分を残しておきます。
最後の攻撃が成功したと思い込まない
これはFWCで非常に大切にしている原則です。
次のチャンスを、直前の攻撃が成功したことに依存させない。
パンチは外れるかもしれません。目への攻撃も失敗するかもしれません。打撃が当たっても、期待したほどの効果がないかもしれませんし、相手が予想以上に強いかもしれません。
もし、戦術全体が「この一撃で相手は止まるはず」という前提に依存しているなら、その後のすべてが仮定の上に乗ることになります。
FWCでは、攻撃の後も続けられる状態をできるだけ残します。機会を作り、攻撃し、有利な位置を維持または取り戻し、実際に何が起きたかを見て、必要なら続ける。
もちろん、相手がもう危険でなければ続ける理由はありません。
しかし、一つの技が終わったからという理由だけで、有利な位置まで自分から手放す必要もありません。
「フィニッシュした技」と「終わった状況」は同じではない
この考え方は、「フィニッシュ」という言葉の意味も少し変えます。
フィニッシュ技は、こちらが行う動作です。
しかし、本当に状況が終わったかどうかは、結果です。
この二つは同じではありません。
「この打撃なら終わったはずだ」とこちらが決めることはできません。相手がまだ有効に攻撃できるのか、まだ攻撃を続けようとしているのか、こちらがまだ身を守る必要があるのか。実際の状況が答えを出します。
危険が終わっているなら、こちらも止まります。まだ終わっていないなら、最初からすべてを作り直さなくても続けられる方法が必要です。
目的は、危険な状況をできるだけ早く終わらせることです。ただし、どの一撃がその終わりを作るのかを、事前に決めつけないということです。
有利な位置を自分から手放さない
これはFWCを始めた頃からずっと大切にしてきた考え方です。
一度良い位置を得たら、一つの技が終わったという理由だけで、それを自分から捨てない。相手は防御するかもしれませんし、後ろへ動くかもしれない。方向を変えるかもしれないし、反撃するかもしれません。接触そのものが切れることもあります。
しかし、それだけで必ずリセットする必要があるわけではありません。
今の状態から安全に目的へ進めるなら続ける。相手の反応によって問題が変わったなら適応する。そして、今の状態から続けること自体が危険になったときだけ、意図的にリセットし、必要な条件を作り直します。
これは、相手の腕を必死に掴み続けるという意味でも、相手を完全にコントロールするという意味でもありません。まして、危険が終わった後も攻撃し続けるという意味ではありません。
意味はもっとシンプルです。
問題がまだ終わっていないのに、有利な状況を自分から捨てない。
終わりが決められていないプロセス
J's Gymには、この考え方を偶然とてもよく表しているものがあります。ジムを始めた頃、初心者だった一人の生徒がロゴをデザインしてくれました。その中で、JとSを∞のような形にうまく組み合わせてくれました。
当時は、単純にとても良いデザインだと思っていました。しかし、長く教えているうちに、それがFWCの考え方そのものにもかなり合っていることに気づきました。
一つの技には終わりがあります。
しかし、プロセスそのものには、あらかじめ決められた終わりがあるとは限りません。
Position → Opportunity → Attack → Position → Opportunity...
もちろん、いつまでも戦い続けたいわけではありません。むしろ、できるだけ早く終わらせたい。
ただ、そのループが終わるのは、「技の最後までやったから」ではなく、実際の状況がもう続ける必要はないと教えてくれたときです。
そういう意味では、いつ終わるのかを決めるのは、こちらの技ではありません。
相手と状況そのものです。
トレーニング相手は、こちらを失敗させられなければならない
意味のあるプレッシャーテストにするためには、トレーニングパートナーが本当にこちらのやり方を失敗させられる必要があります。もちろん、怪我をさせたり、無謀な動きをしたりする必要はありません。しかし、こちらがやろうとしている技を止めたり、失敗させたりすることは許されなければなりません。
すべてのドリルが、最終的には必ず防御側の成功で終わらなければならないのであれば、抵抗そのものが最初から決められた答えの範囲内に制限されます。
時には、
「できなかった」
という結果が正しいこともあります。
それは非常に価値のある情報です。
タイミングが悪かったのかもしれない。位置が悪かったのかもしれない。選んだ技が合っていなかったのかもしれない。あるいは、今のシステムそのものが、まだ解決できない問題にぶつかったのかもしれません。
そうした発見は、「成功したことにしておく」よりずっと価値があります。
プレッシャーテストでは、現実にこちらの考えを否定する自由を与えなければならない。
抵抗は段階的に増やす
ただし、だからといって初心者をいきなり自由な戦いに放り込めばいいわけではありません。それでは学習が進むどころか、身体が固まり、力に頼り、もともと持っていた反射的な動きに戻ってしまうことがあります。
抵抗は、能力に合わせて段階的に増やす必要があります。最初は協力的で予測できる状況から始め、次に少し抵抗を加える。そこから抵抗の強さを上げ、方向を変え、反撃を加え、複数の可能性を許していく。経験が増えるほど、何が起こるかについて事前に与えられる情報を減らしていきます。
目的は、トレーニングをできるだけ難しくすることではありません。
実際に見て、判断して、適応しなければならないだけの難しさを加えることです。
シナリオはシステムを試すために使う
この考え方をすると、シナリオトレーニングにも別の役割が見えてきます。
新しい状況が出るたびに、
「このシナリオ専用の新しい技は何か?」
と考えるのではなく、
「今持っている方法を、この状況に置いたらどうなるのか?」
と考えることができます。
壁際ではどうなるのか。座った状態ではどうか。知らない掴み方に対してどうなるのか。武器が入ったら何が変わるのか。狭い場所ではどうか。もう一人近くに人がいたら、何が壊れるのか。
シナリオは条件を変えます。
その中で、何がそのまま残るのかを見ます。少しの適応で使えるかもしれないし、重要な部分が完全に壊れるかもしれません。もし壊れるなら、そこで初めて本当に新しい問題を発見したことになります。
これまでの記事でも触れたように、
状況は増やす。しかし、状況に強制されない限り、システムそのものは増やさない。
シナリオは、新しい答えを集めるためだけではなく、適応力を試すためにも使うことができます。
プレッシャーテストは接触の前から始まっている
最後に、もう一つ認めなければならない限界があります。
多くのプレッシャーテストは、両方の人がすでに、
「今から戦います」
と分かっている状態から始まります。
しかし、一般市民の護身はもっと前から始まっています。
誰かが近づいてくる。その人は危険なのか。距離を取るべきなのか。準備するべきなのか。今なら離れられるのか。どの時点で早めの行動が正当化されるのか。いつイニシアチブを取る必要があるのか。
こうした判断をトレーニングの中で完全に再現することは非常に難しいですが、無視してしまえば、一般市民の護身の大きな部分を最初から外してしまうことになります。
このシリーズでは、不確実性を三つの段階で考えてきました。
INTENT → ACTION → INTERACTION
そもそも何かが起こるのか。
起こるとして、相手は何をするのか。
身体的にぶつかった後、相手はどう反応するのか。
一般的なスパーリングやプレッシャーテストは、三つ目のINTERACTIONを非常によく扱えます。シナリオトレーニングは二つ目のACTIONを扱う助けになります。
そして、一般市民の護身術では、一つ目のINTENTにも十分な時間を使う必要があります。
本当に「リアルな護身術トレーニング」とは何か?
ここまで考えると、リアルなトレーニングという言葉の意味をもう少し広く考えたほうがいいと思います。
激しく見えることだけがリアルではありません。
強く叩くことでもありません。
防具を着けることや、ゴム製のナイフを持つことだけでもありません。
より細かいシナリオを再現することだけでもありません。
本当に重要なリアリティには、不確実性があります。抵抗があります。判断があります。相手が途中で行動を変えられる自由があります。そして何より、自分のやり方が本当に失敗する可能性があります。
どんな護身術でも、現実の暴力を完全に再現することはできません。危険な攻撃の最終的な効果を安全に確かめることもできませんし、現実に起きる恐怖や結果まで道場の中で再現することもできません。
だから、完全に再現できるふりをする必要はありません。
テストできる部分を見つけ、そこにはできるだけ自由を残す。
位置をテストする。
そこまでのデリバリーをテストする。
危険でテストできない部分だけを安全にシミュレーションする。
そして、その後をもう一度テストする。
失敗を許す。
抵抗を情報として使う。
適応する。
必要なら続ける。
そして、本当に続ける必要がなくなったら止める。
プレッシャーテストとは、トレーニングをできるだけ暴力的にすることではありません。
現実に、こちらの考えが間違っていると証明できるだけの自由を与えることです。